陵水俳壇41

自句自解

名古屋陵水第41号

介護所の講談に沸く春の興
        石橋政雄(大6)
 有難いことに介護所には色々なボランティアの方々が来て下さる。先日は、元プロの講談師の方が持参の緋毛氈の上で、釈台を叩きつつ名調子を演じてくれた。久しぶりにスカットした気持ちになった。
雪しずる杉の大樹や初詣
        伊與正道(大6)
 古里を離れて六十二年。今でも幼き日の初詣は忘れられない。六時に起きて父親先頭に七人の子供が、山の上の鎮守へ雪の階段を昇る。右も左も杉大樹で、雪しづれの音がする。今年九月で八十六歳になる。生国福井の想い出は忘れられない。
春蘭や花芽草叢に紛れをり
        久保 昭(大6)
 植物園の道辺の土手に草叢に紛れて春蘭の花の芽が出ているのを見て句を詠みました。尚、春蘭は別名「ホクロ又ははじじばば」とも称します。
願わくは街を澄ませる春の水
        大島一彦(短7)
 暖冬と思っていたところ降ってわいた新型コロナウィルスによる肺炎騒動。争いの絶えない世界が今こそ叡智を集めてウィルスを克服し、助け合う世に向かうことを願うばかりです。
賀状来ずどうかしたかと友の声
        倉坪和久(大13)
 年令がら友を喪くし始めて嘆いていたら、昨年末に自分が心筋梗塞で救急入院となって賀状どころでなくなった。そこでこの句になった次第。申訳ないようなちょっとうれしいような・・・
庭先の蕾に春の見え隠れ
        青山政弘(大17)
 一月の終わりごろから梅の蕾が少しずつ捲れ色付き始めます。朝の散歩時に捲れ度合いを観察し春の訪れを楽しんでいます。
父母の杖並ぶ玄関初日の出
        片岡嘉幸(大25)
 田舎で二人暮らしをしている父母は、九十三歳と九十一歳の正月を迎えた。九十を超えてめっきり足腰の弱ってきている二人であるが、今年も元気に外出する二人であって欲しいものである。