■「学長挨拶」の要旨全文
- 陵水会への御礼。
陵水会から大学への物心両面に渡る支援への御礼。文科省からの資金の目減り分に、陵水会の浄財を充てている。データサイエンス学部は、企業との共同研究等による資金が入るようになってきた。 - 外部資金について。
2年前に比べて6倍に増えた。日本の中で6倍に増えたのは滋賀大だけだが、元が小さいから6倍になった。 - 滋賀大学創立70周年について。
戦後の1949年、全国で新制大学が設立されたのは5月31日。今年の6月1日には、その70周年記念式典を琵琶湖ホテルにて開催。同時に、大学院DS研究科の設置記念式典も行われた。この日の午前中には、海外の6つの大学(滋賀大学と連携協定結んでいる)から代表をお招きして、国際フォーラムを開催。「未来の大学の形」ということで、それぞれの国において大学は危機的な状況にあり、いろいろな取り組みをしていて、お互いに協力・参考にして前に進んでいきたい、という話に。午後からは、記念式典に続き、金出武雄先生(カーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授)の記念講演、祝賀会(300人超)が催された。 - データサイエンス研究科大学院修士課程開設について。
今年、大学院研究科の修士課程を開設できたのは、企業からの要望もあり、文科省へ申請して認められ2年前倒しでDS大学院を作ったという経緯。来年は1年前倒しで博士後期課程を作る計画もある。一貫したDS教育・研究を、滋賀大が核となってできることになる。 - アエラ掲載記事について。
受験者数が昨年に比べて1000人以上増えた。日本の大学の中で、最も受験生数が増えた大学として紹介された。1000人増えて受験場所をどうするか?嬉しい悩みでした。記事の中で、DSを中心に走っている大学として、武蔵野大学(MU)、滋賀大学(S)、横浜市立大学(YC)を挙げて、ミュージックと名付けられた。我々としては、3つ一緒にされても困るなぁ(冗談)・・・4ページに渡る記事だが、3ページは滋賀大のことなので、Sが大文字になっても(良いのではないか)。 - 企業との連携協定について。
DSで企業との連携協定は約45件、共同研究を含めると100件を超す『産学公連携機構』。
トヨタとは、道場(DSについての定期セミナー)。 京都嵐山の嵯峨野観光鉄道とは、滋賀大学が連携協定。
トロッコ列車を観光資源として観光振興の知恵を出す。経済学部の学生が企業の中で関わる。 - 大学を輝かせるための取り組みについて。
3年前から大学全体の活動を分類している。先生方の研究への助成→『研究推進機構』。学生の教育充実→『教育・学生支援機構』。大学全体の取り組みを扱う→『情報機構』。グローバル化の進展→『国際交流機構』(国際センターを改組拡充)。 - 文科省からの評価について。
1年前に文科省から出されたH29年度滋賀大学業務実績評価は「特筆すべき」という極めて高いものだった(日本中の国立大学で3つしか付けられなかった)。また、学長裁量経費(*)についても模範的事例として全国に紹介された。
(*)滋賀大学を前に進めたいという内容で配分する他、学長がアイデアを出して進める案件が対象 - 講堂の耐震改修工事について。
(彦根高商時代の)講堂は4-5年使えなかったが、耐震改修工事を始めることに。今月から工事開始、来年4月末頃までかかる見込み。
<参考>
■滋賀大学は2019年5月に創立70周年を迎えました
https://www.shiga-u.ac.jp/70th/
■滋賀大学創立70周年及び大学院データサイエンス研究科設置記念式典 式辞「滋賀大学創立70周年を迎えて」
https://www.shiga-u.ac.jp/information/organization-management/president/info_president-massage/info_msg20190601/
■滋賀大学創立70周年記念誌「写真でみる滋賀大学の歴史」
https://www.shiga-u.ac.jp/wp-content/uploads/2019/05/201903_70th-history.pdf
- 彦根高商から継承されている校風、土着の文化、彦根の環境は、世代を超えて続いている。
- 彦根で面接を受け、球技全般を教えられる新卒の教師として採用された。S44(1969)年4月1日に体育の助手として赴任。当時から、滋賀大は教員と学生の距離感がとても感じ良く、ゼミも先生のご自宅でやったり。学生は、勉強だけでなく人格も学んだ。
- 昔から、体育大学ではないかと思えるほど運動が盛んだった。高商時代時代のOBの皆さんの活躍で、全国レベル部活が沢山あった。しかし、そんな中でも廃部の危機を迎えた部活はいくつもあり、ラグビー部も例外ではなかった。ラグビーワールドカップの予想の話が続いたあと・・学生とOBの関係が薄れてきていることを指摘された。
- 記事には、この(2019年)春の滋賀大への志願者が1,145人も増えた。第2位の大分大学志願者数も1,077人増えたと書いてある。数字的には接近している人数だが、実は大分大学は昨年の志願者が850人減っており、今年の1,077人はその反動(受験界ではよくあること)。滋賀大の昨年の志願者は120人減っていたが、2年前と比べても今年は1,000人以上増えている(これは今までの受験界の常識では考えられないこと)。しかも、1,145人のうち1,000名は経済学部への志願者増加であった。試験監督に総動員であたりました。
- DS学部が大成功して「文理融合」を掲げた滋賀大の名前は全国に轟いているが、それを受けた高校生は、滋賀大はどの県にもある(県名を冠した)大学ではなく、全国的にも意義のある大学であると認識。そして周りの先生や先輩たちを見回すと、確かに経済学部卒で活躍している実績が沢山あった。ということで、安心して滋賀大経済学部を受験したのではないか。
- 最近でも、DS学部大学院が順調に立ち上がっている等の紹介記事が京都新聞と中日新聞(滋賀版)に相次いで掲載。滋賀大のポジションは大きく変わっている、例えば、講堂(学生が日ごろ使う教室でもないシンボル的な建物)の改修工事に3億円に近い金額が国から出たことからも明らかである。
- 記事では「それにしても、滋賀県彦根市という全国的にはマイナーな地にありながら、北海道や鹿児島などからも学生を引き付ける滋賀大の強みは何なのか。」という文脈がある。もともと滋賀大は全国から優秀な学生を集め、全国で活躍している大学。昨年もほぼ全国から(秋田県以外)から志願者を集め、今年は本当に全国から志願者が集まった。そのもともとの強みの上で、DS学部誕生に至っている。記事に経済学部のことが書いていないのは、少子化や財政難による大学改革の現状があり、経営資源を文系ではなく理系へ集中する対策が全国で進んでいる、その成功例としてDS学部を取り上げているから。
- この経営資源の配分の変化は、実は全国の経済学部にとって深刻な問題。総合大学であればそれなりの方法もあろうが、もともと経済学部と教育学部しかない滋賀大にとっては、存亡の危機にあった。その大きな危機感から、全国に先駆けてDS学部創設という大英断が生まれて、今日の飛躍に至っている。しかし、大学の生き残りには成功したが、経済学部が生き残れるかどうかが危ういのは残念ながら続いている。
- 人的資源が減少してもパフォーマンスを維持しなければならない、という点でも危機的状況にある。記事には大きな特徴として教員の多さを書いている、100名の学生に対して教員は34名である。その教員の多くは、外部研究費を充てて研究のために雇っている(年限付きの)若手の教員。しかし、教育に携わる常勤の教員を一年限りの企業からの寄付金で雇うことはできないので、DS学部充実のための資源は経済学部や教育学部から振り分けているのが滋賀大の現状。その結果、経済学部はこの3年間で8名の教員が退職したが、その補充がほとんどできていない。
- 我々が手に入れたいのは、文理融合という新しい領域。DSという領域が切実に必要とされている多くは経済・経営の領域。必要な人材は、経済学部にも求められている。その実現に向けて我々は、日本で一番優れた人たちとすでに取り組み始めている。このチャンスを生かすために「副専攻」という方法で工夫しているが、経済学部の教育・研究にはDS学部が身近にある強みをもっと生かせないと、本当の意味での経済学部の生き残りは始まらない。それも、人的資源減少の中で遂行しなければならないので、昨年12月に発売された「週刊朝日」の記事「同窓会が大学を救う」が頭に浮かぶ。滋賀大は間もなく(彦根高商以来)100周年を迎えるが、また次の100年も日本を牽引する経済学部であれと、背中を押していただきたい。陵水会には、今後とも物心両面での支援をお願いします。
- まずは、陵水会名古屋支部とトヨタ陵水会への御礼から始まり、教員の説明へ。
- 34名のうち11名が外部資金(企業連携による寄付金)による期限付き雇用であること。3年前に赴任した頃は、こちらから一日何社か企業を回りながら企業との連携を求めていたが、(陵水会の)コネクションを活かしていただいたおかげもあり、外部資金の教員は2年前の2名から今年は11名を得られるまでになった。
- 企業からの問い合わせは今も多い。国も「AI人材を育成しなさい」と全国の大学へ向けて働きかけており、滋賀大は一番目立っていて期待もされている。文科省に頼らなくても外部資金を得ているという自助努力の姿勢は大きく評価されている。
- 陵水会会員は全国に(ご存命の方)約28,500名、この10年間で約5,000名増えた。このまま推移すると、4年後に迎える2023年の滋賀大・彦根高商創立100周年の時には、軽く30,000名を超えそう。これから20年くらいは、毎年400~500名ずつ増えるのではないか。
- 滋賀大は今や乗りに乗っており、自分はヨット部だったが、こういう場合を「順風満帆」、あるいは「フォローウインドを充分に受けて」と言うこと。しかし、会員数が増えるだけでは意味はなく、実際の活動を伴わないと更なる発展は望めない。陵水会を挙げて滋賀大を応援していきたいので、これからも益々のご支援をお願いします。