陵水俳壇44

自句自解

名古屋陵水第44号

飽食の国のあやうさ五月闇
        伊與正道(大6)
 現在の日本は食文化全盛の時代である。日本食はもとより、中華、西洋の美味い物を何時何処でも食べられる我々は正に飽食の時代に生きて居る。戦争の無い平和な時代に今我々は生き、これが当たり前の様に思って居るが、こんな時間は永い歴史の中で一瞬でしかない。人間は何時の時代でも何処かで紛争を起こして来た。欧州でのウクライナの戦いは、一年を経て解決の様子は見られず、東では、台湾海峡が不安である。米国は支援をしても直接手を染めず、日本、韓国が前面に立つ構想であろう。日本は平和に馴れ飽食を楽しんでいる時ではない。千年来の友中国と心を開き、政治経済文化全ての面で交流を密にして深く結びついて、間違っても戦火を交える様な事態は避けなければならない。我々は食べ物にうつつを抜かすではなく隣国中国と親善交流に勉める時である。
幼児に振り回されて三ヶ日
        石橋政雄(大6)
 年末には次女が札幌より夫と男の子二人と共に我が家に里帰りする。小五と小二である。普段夫婦二人の静かな生活は、一変する。主導権は完全に子供二人が握り大人四人が振り回された三ヶ日である。
若き日の声を偲びつ初謡
        倉坪和久(大13)
 最近、病気がちで気分もかなり落ち込んでいる。「謡曲部」部長時代の声の張りで、朗々と謡いたいのだが・・・・
母の日や梅を包みし竹の皮
        青山政弘(大17)
 幼少のころ母親が柔らかい梅を筍の皮で三角に包んだおやつを造ってくれました。その頃はお菓子や飴も高く、何時も食べられませんでした。母親は整腸等によいとの思いがあったと思いますが、孫に出したらどんな顔をするでしょうか。
三人の子供片付く菊日和
        片岡嘉幸(大25)
 結婚して最初の子供(長女)が生まれたとき、この世の幸せを感じた。その後二人の子ができ、三人の子供を育てた。下の子二人は浪人留年せずに大学を卒業し、適齢期に結婚して孫もできた。しかし長女は、浪人、卒業、就職、二つ目の大学入学、留年、薬剤師試験も一度に受からず、苦労に苦労を重ねていた。そんな長女が昨年結婚した。親としてこんなにうれしい事はない。