滋賀大学DS学部「快走!」

2017年に国内で初めてデータサイエンス学部を設けた滋賀大(滋賀県産根市)への注目が増している。専門人材「データサイエンティスト」の需要は高く、卒業生は各分野で活躍している。学部創設から8年目を迎えた同大の教育理場を訪ねた、という記事。

2024(令和6)年6月1日(土)付 中日新聞P17より抜粋

企業と連携「生の数字」分析

同学部では最初の2年間は、プログラミング統計解析といった、データを扱うために必要な知識と技術を必須科目とする。3年生からは、一転して、データサイエンティストとして社会で活躍できるよう、徹底的に演習をこなす。

「意外だと思われるかもしれないが、データサイエンティストにはコミュニケーション力が必要」。「いきなりデータを分析して『何か面白いことが分かれば』というやり方は大学では良いが、ビジネスの現場では順番が違う。目的を達成するには、どんなことが分かれば良いかを(先に)説明できるように言語化し、その後に分析する」のだという。

「実際の現場の課題は多種多様。だからこそ、点ではなく面で経験させることで、学生一人一人が成長していってほしい」と、河本薫教授はゼミ生の指導に当たっている。同ゼミでは卒業までの2年間で6社と提携し、課題解決型の演習を行う。小売店のデータ分析を手始めに、機械学習を活用した顧客マーケティングや製造現場での不良品の原因追及までと、カバーする範囲は広い。また、提供されたデータ分析にとどまらず、企業担当者に交渉することもある。実社会の現場に近い形での演習で、問題解決力を養っている。

課題解決力 自主ゼミで鍛錬

学生たちに純粋な学びを楽しむ場を提供するのが、学部開設当初から続く「自主ゼミ」。卒業単位とは一切関係ない課外活動のような取り組みだが、「興味のある問題を見つけ、自分で手を動かしてデータを集め、そして、その中から何かを読み取る。やっただけの教育委効果は十分にある」と、語るのは深谷良治教授。「琵琶湖での強風予測まで持っていき、湖上で活動している人たちの意思決定に役立てる気象データの提供を目標にしたい」とする自主ゼミを指導している。よほどの情熱がないと取り組めないが、興味があれば1年生の時から参加でき、上級生らと交じって研究を進められるのが魅力だ。

実践的な演習重ねスキル磨く

創設参画 竹村彰通学長に聞く

全国に先駆けてデータサイエンス学部を創設した

経済、教育に次ぐ第3の学部を創設する構想は、常々大学内にあった。データサイエンティストを国内でも要請する必要が高まる中、分離融合の領域だからこそ、文系学部専門性を育んできた滋賀大の強みが生かせると考えた。

企業のリアルなデータを大学の授業で生かしている狙いは

学部創設の前後に企業を巡り、企業がどのような専門的な人材を必要としているかを調べた。その取り組みの中で、共同研究の話だけでなく、教育でも協力してくれることになった。企業が保有するデータの提供もその一環。社会が求めるデータサイエンティストを養成するには、実際の企業の課題に取り組む経験が必要。

各地の大学でデータサイエンス学部の創設が相次ぎ、学生の獲得競争は激しくなっている

企業データを活用後、その結果を関係者に説明する場を設けることでプレゼン力もを鍛えている。今後は、その強みに加え、アートの要素も掛け合わせていきたい。対話型の生成AI(人口知能)の分野でも先陣を切りたい。

今後の課題は

データサイエンス学部が全国でのフロントランナーの位置を維持していくことは重要。統計学などを扱う経済は当然のこと、デジタル化が進む教育とも相性は良く、将来的な大学の強みになると考えている。


不足するデジタル人材
育成支援 文科省が認定制度

文部科学省は2021年度、データサイエンスなどの知識を身に着けられる大学などの教育プログラムを、認定する制度を開始。データの利活用といった背景知識から学ぶ「リテラシーレベル」とプログラミングなどを基礎から学ぶ「応用基礎レベル」の2種類がある。全国で昨年2023年8月時点で、リテラシーレベルが382件、応用基礎レベルが147件認められた。

2024年6月1日付中日新聞記事より抜粋:横井隆幸(大33)

■滋賀大学
【掲載】提携企業のリアルなデータを使った課題解決型の授業と自主ゼミの取り組みが中日新聞に掲載
https://www.shiga-u.ac.jp/23638

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