第27回陵水金鯱懇話会

写真:滋賀大学経済経営研究所デジタルアーカイブより。
陵水会の会報やその記事:陵水会所蔵。

第27回陵水金鯱懇話会

陵水金鯱懇話会が、2025年4月12日(土)に開催されました。会場は、重機商工様の会議室。今回の講師は今井綾乃さん(大58・経院50)です。懇話会大人気の「彦根高商&滋賀大学の歴史シリーズ」が4年半ぶりに復活。今回は第5弾で、演題は「母校100年の歴史」です。今回の聴講者は、滋賀大学の澤木先生、金沢星稜大学の野林先生にもご参加頂き、合計28名でした。

第27回陵水金鯱懇話会

講演内容

なぜ、どのようにあの彦根の地に学校ができたのか

  • 1918年に政府が滋賀県に高商をおくことを公示し、大津/八幡/彦根が名乗り出ました。
  • 彦根の誘致運動は渡辺九一郎(犬上郡の郡会議長)が主導、彼は(彦根町だけとせず)犬上郡の運動とし、誘致運動を展開。京阪神で活躍する郡出身の実業家からの寄附の約束を取り付ける ことに成功しました。
  • また彼は、懇意な関係であった滋賀県の代議士に働きかけ、立憲政友会の中央幹部へ誘致の陳情も行いました。そして、その陳情から数日後に、彦根への高商誘致が内定しました。
  • 寄附者238名。内、大口寄付者が44名(現伊藤忠商事、日本生命保険、滋賀銀行など滋賀県にゆかりのある実業家)。残る194名中、121名の職業が判明。その殆どが彦根で商売を営む人々(商店主、北野神社の社司、旧彦根藩の藩医、宿屋を営んでいた女性など)でした。これらから地域の盟主だけでなく、地域に根差して生活していた人々も誘致を願っていた事を伺い知る事が出来ます。
  • そして地域住民の思いは繋がり、昔も今もキャンパスと地域の繋がりは脈々と続いています。例えば、彦根高商時代は著名人の講演会(ヘレンケラー、新渡戸稲造、湯川秀樹)に住民を招待したり、最近では学園祭の校外開催、地域の酒造会社とのお酒の開発&販売などがあります。

彦根高商のカリキュラムの特徴から、どういった人材養成が過去に行われてきたのか

  • 彦根高商は「卒業論文」に加え、1937年より「特殊研究論文」を書かせていました。当時の田中校長は「サラリーマンには調査研究能力はマストであり、その上での独創力も必要」と述べています。彦根高商は「研究指導」「特殊研究」という2つのカリキュラムを用意し、事業経営を担える人材育成を目指していたといえます。
  • もうひつの特徴は、サラリーマンとして活躍できる人格を身につけるため、1926年度から「哲学概論」と「文化史」を必修科目としてきた点です。
  • 1973年時点、彦根高商卒業生の約35%が企業の取締役に就任、あるいは自営業でした。今後、この割合についての評価もしていきたいと考えています。
  • 陵水会名古屋支部の始まりの様子

      ■陵水会の始まり
    • 彦根高商の第1回卒業生により1926年3月に同窓会が結成され、来年2026年が同窓会設立100周年です。
    • その第2回と思われる総会の記事が、彦根高商時報(学校新聞)に掲載されています。1927年6月18日に入江町のさつきで開催。「学校の話、先生のうわさ、卒業生の消息、うたげもいよいよたけなわとなって校歌が出る。この夜わこうどの胸は感激に燃えたのであった」とあり。
    • また、1度きりですが、名古屋で総会を行ったことがあったこともわかりました。
    第27回陵水金鯱懇話会 陵水会・名古屋支部の始まり
    大正15年(1926年)「会報」第1号発行
    第27回陵水金鯱懇話会 彦根高商時報
    第2回と思われる総会の記事
    第27回陵水金鯱懇話会 陵水会臨時総会名古屋にて
    1度だけ総会が名古屋で開催
      ■陵水会各支部の始まり
    • 1926年5月8日に東京、大阪支部が、同年5月29日に名古屋支部が結成されました。
    • 名古屋支部の発会式は、名古屋商品陳列館で行われました。母校より校長他、4名の先生が列席。西垣教官の「貸借対照表を通じて見たる人生観」という話が興味深かったと当時の記録にあり。
    • 当時の名古屋支部規則は第11条において、その目的を現在と同じく「目的は会員相互の親睦」としていました。現在の名古屋支部規則の第2条に該当します。支部会員は愛知、岐阜、三重在住の卒業生。当時は支部の代表を支部長ではなく幹事長と呼び、幹事が支部運営を行い、春と秋に親睦会(支部総会)を開催することが決められていました。
    • その後、1936年に岐阜支部/一宮支部が、1937年に三重支部が発足しました。
    • 来年名古屋支部は、100年を迎えます。支部に関わる資料だけでも皆さんに見ていただけるようにできないかと考えています。
    第27回陵水金鯱懇話会 名古屋支部発会式
    第27回陵水金鯱懇話会 名古屋支部規則

    上記の写真は、当日のスライド資料。
    スライド掲載の写真資料は、陵水会所蔵の『会報』を講師撮影。

    質疑応答

    「陵水会」と言うようになったのは何時から?
    1929年10月20日の第4回総会で決議されました。
    「陵水会」の名前の由来は?
    彦根城の城山の「陵」と琵琶湖の「水」から取って「陵水会」と命名されました。
    哲学概論と文化史は今も講義科目なのか?
    哲学は選択科目、文化史は一般教養科目として継続しています。
    彦根高商/滋賀大学の歴史の研究は、今井さん一人でやられている?
    以前より、阿部安成教授が研究をされていました。現在は、教授とともに研究を行っています。
    ※今井氏は現在、滋賀大学経済経営研究所・滋賀大学経済学部附属史料館 客員研究員。

    所感

    今井さんの過去4回の講演内容(※1)からブラッシュアップされ、榎本さん曰く「より広く、より深い内容」で母校の歴史を紐解いてくれたと感じます。また過去の様々な資料、写真を提示しながら、説明を加えてくれた(※2)ので、皆さん興味深く、聞き入っていたと感じました。

    (※1)バックナンバー:陵水金鯱懇話会第18回~第21回演題「来る100年と次の100年に向けて―彦根高商の日々を知る―」演題「来る100年と次の100年に向けて―彦根高商の日々を知る―」で閲覧可能です。
    (※2)彦根高商学生の描いた学生生活の絵、小倉元教授の学生時代の特殊研究論文、陵水会館設計図、新歓マラソン写真、名古屋支部の発会式資料&支部規則等々→講演時の資料の多くは、滋賀大学経済経営研究所のホームページの「収集資料&デジタルアーカイブ検索システム」から、閲覧可能です。※例えば、キーワード「陵水」で検索してみてください。

    懇親会開催

    懇話会後に、場所を韓国料理屋「韓味屋」に移動し、懇親会を行いました。懇親会は総勢25名。女性の方も今井さん、鈴木さん、張さん、現役学生さんの4名が参加してくれました。
    塚本副支部長の乾杯の音頭で始まり、いつもと同様、大変賑やかな会となりました。最後は親睦会から参加してくれた肥田さん(大54)が、明るく元気に1本締めで締めてくれました。

    第27回陵水金鯱懇話会
    第27回陵水金鯱懇話会
    第27回陵水金鯱懇話会

    記:田中直樹(大34)

    ■陵水亭懇話会
    https://nagoya.ryosui.jp/shibu-katsudo/konwakai/
    ※[ 旧 ]陵水亭懇話会 → [ 新 ]陵水金鯱懇話会 2023年2月より名称変更

    ■滋賀大学経済経営研究所のホームページ「収集資料&デジタルアーカイブ検索システム」
    https://mokuroku.biwako.shiga-u.ac.jp/
    ※例えば、キーワード「陵水」で検索してみてください。