彦根、大雪

「積雪73センチ」

大雪が彦根を襲った。高速道路と国道は通行止め。JR在来線も近江鉄道も動いていない。一般道のあちらこちらで車が立ち往生。コンビニやスーパーには食料がない。彦根は陸の孤島と化した。

災害級の雪が降る2日前。2021年12月24日(金)、院生である私は、愛知から彦根へ向かった。雲の多い天気のなか大学に到着すると、知り合いの職員さんが校舎棟の入口前で雪かきスコップを用意していた。スマホで天気予報をみると、今夜から滋賀北部は数日、雪予報。「今からもう、雪かきの準備ですか?」と声をかけると、「土日に雪が降るみたいだからね。週明け、校舎内に入れないといけないから、外に置いておくんだよ」との返事。それを聞いた私は呑気にも、雪かきが必要なほど積もるかな~と疑った。今になって思えば、恥ずかしい。だが、その職員さんも、まさか大学にたどり着くことができないほどの雪が積もるとは、予想していなかったはずだ。

26日の明け方には雪が本格的に降り始めた。一晩中降り続き、27日には平年の約36倍となる73センチの積雪を観測。12月として過去最深という。その日、愛知で見た全国ニュースで、混乱している彦根の様子がとりあげられていた。国道でトラックが立ち往生している。その周囲で渋滞が続いている。今にも折れそうな横向き信号機。その信号機の上に積もった雪を、警察官が棒で落とそうとしている。歩道を歩かず、車道を歩く人々。すべて、私の見知った場所だ。

彦根、大雪2021年12月 国道渋滞

後日、彦根に住む別の職員さんに話を聞いた。積もった雪をどかせばなんとかなると思っていた。でも、どかす場所がなかった。あたり一面が積もっているから。屋根にも70センチの雪が積もっている。その雪が下に落ちてくる。だから、70センチって言うけど、それ以上の高さがある雪の壁だった、と。

彦根、大雪2021年12月 住宅1
彦根、大雪2021年12月 車
彦根、大雪2021年12月 彦根城

冬休みに入っていたため、授業にはほとんど影響がなかったようである。JR在来線は2日間ほど運転を見合わせた。帰省の予定がずれた学生はいたかもしれない。旧城下町には除雪車が入れず、住民が雪かきに追われたそう。報道によると、転倒などで30人が怪我をしたほか住宅被害134件、農業用ハウス8棟の全半壊。

改めて思う。彦根は雪国。今年ほどではないものの、1年に数回は雪が降る。そして、積もる。雪をかぶった彦根城に見惚れる。授業時間が始まっても、友達と雪で戯れる。凍った道路の怖さを知らないがために自転車に乗り滑ってこける。彦根でこんな経験をしたのは私だけではないはず。

=写真について=
※2021年12月26日~31日に撮影。※八木謙樹氏(経院47回)と滋賀大学職員より入手(撮影者の掲載承諾済み)。

記:今井綾乃(大58・院41)